「や...やっと着いた....!」
CAT LADY
出発してから7日目のお昼過ぎに、ようやく木の葉の里についた。
ねこの他にも2人、おばさんのお手伝いさんが行くことになり、3人
で途方も無い長い旅路をこえてきたのだった。
ねこは体力がないのでついていけるか心配だったが、3人ともペースが
同じ程度なので思っていたよりもゆっくり着実に進めたのが幸運だった。
3人は入国審査を済ませると、とりあえず働く宿に向かうことにした。
ねこは初めての木の葉の里に興味津々で、キョロキョロ周りを見渡す。
「わぁー、すごいなあ...!活気があってステキな里!」
そうして歩いている内に、大きな宿に到着した。
月見屋
大きな看板にはそうかいてあった。
中に入ると、ご高齢の女将さんが笑顔で3人を迎えてくれた。
2階の部屋に案内され、中に入ると小奇麗に整頓された部屋に
なっていた。窓からは木の葉の里の風景が見える。
ねこはその部屋をとても気に入り、ベッドにダイブした。
ここ一週間歩き詰めでクタクタになっていたねこは、荷物が
部屋に運ばれてくる前に、すやすやと熟睡してしまった。
次に目を覚ますと、明るかった部屋が真っ暗になっていて、
すっかり夜になっていた。
ゆっくりのびをして、時計を見ると、もう午前3時だった。
「わあ!12時間近くも寝ちゃった....」
ねこは部屋についているシャワーを浴びて、荷物の整理やら
着替え、身だしなみを整えたりして時間を潰した。
*
宿での仕事は、朝昼晩の食事をつくる手伝いをすることがメインだった。
盛り付け等の簡単な単純作業なので、受付のように色々仕事を覚える必要
が無かったのでねこは助かっていた。
お昼ごはんの調理補助を終えて、昼食をとり、後片付けを済ますと、夕食まで
ねこはやることがなくなった。女将さんに何かお仕事があるか聞きに行くと、
「あらぁ、それだったらぜひ木の葉の里を見に行ってらっしゃい。良い所だからね。」
今年で88歳になる女将のチヨさんはのんびりとこう言った。
「いいんですか?ありがとうございます!では少し見に行ってきます。」
ねこは木の葉の里を散策してみたくてうずうずしていたので、
とても嬉しくて、子供のように外に飛び出していった。
木の葉の里は、自然が豊かで、人々も陽気な感じがする。
街は少しレトロな感じで情緒があって、とても木の葉らしいと思った。
街を歩きながら、ねこはぼんやり考え事をしていた。
そういえば、我愛羅達は今ごろ何をしているんだろう....。
おばさん達の話によると、第二試験というのが終了したらしい。
あと、一ヵ月後に最後の本戦というのがあるというのも聞いたんだけどな..。
その本戦を見に、たくさんの人が各国から来るらしい。
うーん、知らないことばっかりで、ほんと私って無知だなぁ。
もっとお勉強しなきゃ...、そう思いつつ広場の噴水のふちに腰かける。
すると、何処からか視線を感じた。
きょろきょろと周りを見渡す。すると少し離れた位置に忍3人がねこの方を見て
ひそひそと何か話している。
ねこは何だろう、と思いつつもあまり気には掛けなかった。
だが、普通忍であるものが、自分の気配を消せない筈がない。ましてや一般人のねこに
悟られるなんて事はありえないことだ。
忍は故意的にねこに自分達の存在を誇示している様子であった。
数分してねこは立ち上がり、商店街の方へ向かおうとする。
今お金は無いが、お給料が入ったら何か買おうと思っていたからだった。
いろんなお店を見周り、ウィンドーショッピングを楽しむねこ。
でもやはり初夏の日差しは強く、暑くなり疲れてきたねこは、
大通りの賑やかな商店街を避け、人通りの少ない道に曲がった。
裏通りの道は、ひんやりとしていて涼しかった。
ねこは鼻歌を歌いながら、適当に歩く。
ガシッ
突然何の前触れも無しに手首を掴まれた。
振り返ると、さっきねこの方をみていた忍3人がいた。
忍3人は岩隠れの忍者だそうで、年は20代ぐらいだ。
ニヤニヤとわらいながらねこを見ている。
ねこは嫌な感じがした。
「あの、何ですか....?」
ねこは男達に尋ねる。
手を掴んでない一人が答える。
「お姉さん、木の葉の里初めてなんだろ?
俺達が案内してやるよ。」
相変わらずニヤニヤとしていて気味が悪い。
なんでわざわざついてきたのだろう。
ねこはどうして岩がくれの人達が案内を自分に申し出るのか
理解できず、不審に思っていた。
なんだろう...この人たち...。
「い、いいです...知り合いもいるので...。
すみません。手、離してもらいたいのですが...。」
「そんなつれないコト言わないでさア、お姉さん。
俺達中忍試験の本戦にも出る、つよぉい忍なんだぜ?」
また違う1人がそう言う。他の2人が声を出して笑う。
手は相変わらずつかまれたままで、離してくれない。
ねこは段々恐くなってきた。
おまけに、だんだん壁際に追い込まれている。
「わたし...用事あるのでっ!
お願いです、離して下さいっ」
ねこはそう言って空いている方の手で掴む手を解こうとする。
しかしねこの手首を掴む男の手はビクともしない。
ねこの手首を掴む男は、ニタリと笑う。
まるで、獲物を狙うハイエナのように。
「逃げられないぜ...大人しくしな。」
そう言ってキラリと光るものを片手で取り出す。
それは...クナイだった。
「っ!やめて下さいっ!!」
ねこは必死に逃げようとする。
こわい。こわいよ。誰か。
ねこが必死に抵抗するも、忍の男達からしたらまったくの
無力に等しく、そればかりか逆に男達はそんなねこをみて喜んでいる。
なんとか手をほどいて走ろうとするねこ。クナイがちらりと目に入り、余計に恐怖心が増す。
足が恐怖でカタカタと震えて、走るはずがガクンと倒れてしまった。
どうしよう!逃げれない!
ねこはしりもちをつく姿勢で、後ずさりする。
男達にとっては好都合で、1人がねこをすばやく押し倒して両手首を掴み
馬乗りになる。
ニヤニヤと笑う男達。
大声で叫ぼうにも、口に布のようなものをつめこまれて叫べない。
たすけて!たすけて!たすけて!
「安心しなよ、暴れなければ乱暴しないからさ....」
にやりとますます笑いを深くする男達。
恐怖で思わず目をつむるねこ。
1人がねこの衣服に手をかけようとした。
その時。その瞬間。
ドゴォオンッ!!!
激しい破壊音が聞こえた。
「ぐふぅっ....」
男の声。
身体が軽くなる。
目をおそるおそる開けると、ねこの上に乗っていた男が気を失って倒れている。
「大丈夫ですかっ?!」
お団子にチャイナ衣装風の女の子が慌てた様子でねこに聞く。
慌てて逃げた1人は全身スーツにオカッパの少年が追いかけて背後から
まわし蹴りをくらわせて、あっけなく倒れた。
最後の1人はクナイを取り出し、髪の長い少年に向かって投げつけるが
難なくかわされ、一瞬で急所をつかれて「ぐっ...」と言いながら崩れた。
ねこはあまりに一瞬で訳がわからなかった。
女の子が口に詰められた布を取り出して、心配そうにねこの顔を見つめる。
ねこは顔を真っ青にしてカタカタと小刻みに震えている。
涙がこぼれて頬を濡らし、衣服や髪も少し乱れている。
その姿は、ひどく痛ましかった。
「かわいそうに....こんなに震えて。もう大丈夫ですよ?」
オカッパの少年が心配そうにねこに言う。
「木の葉の者か?一体何の騒ぎだ。」
バキが大きな破壊音を聞きつけやってきた。
そんなバキの姿を見て、ねこは余計に涙がこぼれた。
バキは座り込むねこの痛々しい姿と、周りに倒れる男達をみて、
瞬時に何が起きたか判断したようだ。
「ッこの野郎共ッ......!」
バキは憎憎しく男達を見て呟く。
言葉にならないような、まがまがしいバキの殺気が辺りをつつむ。
ネジでさえ、このバキの殺気に圧倒されてしまった。
「バキさん!やめて下さい!今はこの人を病院に
連れて行ってあげるのが先です!!」
テンテンが殺気に顔をしかめながら、そう叫ぶ。
バキはハッとした。自分の失態に気づき、すぐにねこに駆け寄った。
「この女性は我々の里の人間だ。私が連れて行く。」
テンテンとネジとリーの3人は驚いてバキを見る。
バキは早くねこを連れて行かねばいけないと思った。
ねこのこのような姿を我愛羅達がもし見てしまったら、
とても面倒な事にもなってしまうと考えたからだ。
バキはねこに声をかける。
「大丈夫か?今安全なところに運ぶからな。」
「はい...ごめ.....なさ..い..」
無意識なのか、ねこの身体の震えと涙は止まらないようだ。
バキはねこを連れて行こうとそっと肩に手を触れる。
「っ!!っひっ!!」
ねこはビクンと反応し、思わずバキの手を払いのけてしまった。
「あっ...ごめ..なさいっ....!!」
ねこはハッとして答える。余計に震えが酷くなる。
バキは心からこの男達を殺したいと思った。心からこんなに人を
殺したいと思うのは何年振りだろうか。
リーたちも、そんなねこの姿に心をひどく痛めた。
バキはテンテンにこう言った。
「すまないが、私の代わりに病院へ連れて行ってくれ。」
「はい!」
テンテンはそう返事をする。
「さ、行きましょう。ゆっくり立ちあ...」
テンテンのねこへの呼びかけは途中で途切れた。
「ねこ!!!!!」
テマリとカンクロウだった。
テマリとカンクロウは、ねこの尋常ではない姿を見て、顔を真っ青にした。
「バキ先生!一体ねこに何があったんだよ!?」
テマリがバキにものすごい剣幕でまくしたてる。
バキは何も答えない。
するとカンクロウが倒れている男達を見て、呟いた。
「...こいつらがやったんだな、バキ先生?」
いつもの口調も使わず、低い声でバキに尋ねるカンクロウ。
思わず傀儡に手をかけるカンクロウ。それをバキが止めようとする。
テマリはこめかみに青筋を立てて、ギリ..と強く拳を握り締めている。
そして、バキの恐れていた事態が起きてしまった。
「ねこ....?」
我愛羅が。
我愛羅が来てしまったのだ。
ねこは焦点の合わない目で我愛羅の方をゆっくり見る。
涙が頬をすべり、小刻みに震える体を必死におさえつけようとしている。
「が...あら。」
ねこが思わず呟く。
ブツ
我愛羅はワナワナと震え、体中から凶悪なチャクラを発する。
そのチャクラによって、ねこに馬乗りになっていた男が目を覚ます。
我愛羅は砂で男を一瞬で締め上げ、高く持ち上げる。
「おまえは、ねこに何をした...?」
ゾッとする声。チャクラ。殺気。
下手したらバキでさえも呑まれそうな威圧感。
男は「ヒィッ...助けて...」と命乞いをする。
「質問に答えろ。さもなくば殺す。
.....お前はねこに何をした。」
マズイ。今の我愛羅の状態は。下手したらこの場の全員殺しかねねェ。
テマリは冷や汗をタラリと流した。
テマリはテンテンに向かって叫んだ。
「おい!ぼさっとしてねぇでさっさとねこをつれてけ!!」
ハッとしたテンテンはねこを抱きかかえてすぐに飛んで行った。
男は締め上げられながら、恐怖でガチガチと歯を鳴らす。
「お、俺達3人で、広場にいたあの女の後をつけて、
路地裏に入った所をつかまえて...ぐふっ...それで..
...........お、犯そうとし...」
男の言葉が終わるか終わらないかの瀬戸際で、男は真っ赤な血を
降らせながら、姿を無くした。
血が辺り一面にボタボタと降りかかる。
砂の忍達を怒らせた代償は、あまりにも大きかった。
さぁさ、何もこわくない。
銀色の鈴が、なっている。
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