キャット レディ!




CAT LADY


あっという間に出発日がきてしまった。

今日、我愛羅たちは木の葉の里へ出発する。
中忍試験一週間前の日に到着する予定らしい。飛行機や新幹線がないらしいから大変だよね!

我愛羅の他にも、たくさん試験を受ける人がいて、年齢層もマチマチだ。
今日は朝早くから試験を受ける人が、出発するために受付前に集まっている。
わたしはというと、木の葉の里への通行証を、受験者に手渡すのに
大忙しです。受付には列ができていて、ひとりひとりに順番で渡していきます。

「こちらが通行証になります。頑張って下さいね。」
にっこりと微笑みながら、そう手渡していくねこ。
見た目が怖そうな人でも意外と皆「ああ」とか「ありがとう」とか返事を
返してくれることが、ねこにとっては嬉しかった。

通行証を貰うと、スリーマンセルごとに集まって先生の指示等を聞いたりしている。
我愛羅たちの姿はまだ見えなかった。
通行証も一通り渡し終えて、少し手持ち無沙汰になった。
中忍試験の内容とかまったく知らないけれど、聞くところによると危険な内容らしい。
ねこはテマリ達が怪我をたり、危険な目にあったりしないか内心とても心配だった。

「ねこ。おはよう。通行証貰えるか?」

「おはようじゃん、ねこ。いよいよだな、腕が鳴るじゃん。」

テマリとカンクロウが来た。カンクロウは少しウキウキとしている。

「おはよう。テマリ、カンクロウ。通行証ね、ちょっと待ってて。」
2人に通行証を手渡す。

「ありがとう、ねこ。これからしばらくねこに会えないのが残念だよ。」
テマリはねこにそう言った。

「わたしも...2人に会えないの寂しいよ...。身体に気をつけてね?」
やはりしばらくの別れが寂しいのか、シュンとしてしまうねこ。

そんなねこの様子に、思わず必死に声をかけてしまう。

「ほらっねこ!...お土産も買ってきてやるからさ!」
とテマリが子供に諭すように言う。
カンクロウがねこの頭をくしゃくしゃとなでて言う。

「すぐに中忍になって帰ってくるじゃん。心配すんな..。」

「うん...!2人とも頑張ってね、応援してるよ!」
ねこは嬉しそうにうなずきながらそう言った。

すると、カンクロウが「あ、バキ先生じゃん。」と言った。

ねこはパッとその方向を見る。
その瞬間、ねこは一瞬硬直した。

あ、あの人は!

例のぶつかってしまった人だ....ど、どうしよう。気まずい!
向こうは気づいているのかいないのか、ねこの前まできた。

「通行証を頼む。」

「は、はいっ。」

ねこはまともに視線を合わすことができない。軽いパニックを起こしていた。
でも謝らなきゃ....このまま何も無かったことのようになんか駄目だよね。

「はい、通行証です。」

バキに通行証を手渡すねこ。すっと息を吸い込む。

「あっあの!...この間は失礼な態度とったままで、すみませんでした。」
ペコリ、と頭を下げるねこ。自分を勇気付けて顔を上げる。

バキは面食らったような顔をしている。

「い、いや...こちらこそすまなかった。」
そうバキは言った。

「良かった...ありがとうございます。それでは、お気をつけて。」
ねこはほっとしながら、ぱあっと笑い、その後そう言った。

「あ、ああ...ありがとう。」
バキは一瞬ぼうっとして、そのあとすぐにこう言った。
そしてカンクロウ達と共に入り口付近へ向かった。

そういえば....我愛羅...遅いな...。どうしたんだろう?
そう考えていると、声が聞こえた。

「ねこ。」
前を向くと、我愛羅がいつのまにか立っていた。

「あっ我愛羅!めずらしく遅かったね。はい、これ通行証。」
ねこはこう言った後、通行証を手渡す。

突然、我愛羅がずいっと握った手をねこの前に突き出した。

「我愛羅?...どうしたの?」

「.........やる。」

ねこはキョトンとして両手を出す。
我愛羅は握った手をゆるめ、ねこの手の上にある物を手渡した。

キラリ、と光ったそれは、銀色の鈴だった。
大きめの鈴で、動かすたびにシャラン、と澄んだ音が鳴る。

「わぁ...!ありがとう、我愛羅!」
自分の名前でもある鈴。ねこはこの鈴をすぐに気に入った。
特に珍しい鈴というわけでもないが、ねこは無邪気にとても喜んだ。

「ああ」

「大切にするね!私、お仕事がんばるから、我愛羅もがんばってね!」

「ああ、必ず合格してみせる...」
我愛羅は武者震いでもするかのように、不敵に笑いそう言った。
我愛羅たちは自信満々だ。実力が備わっているからこそ
そのように言えるのだなぁ、とねこは思った。

受験者である砂の忍たちはどんどん出発していく。
ねこは、もう一度我愛羅たちと言葉を交わして見送った。

さっきまで賑わっていた受付も急に静かになり、ねこは少し寂しさを覚えた。

そっと、さっき我愛羅に貰った鈴を懐から取り出した。
リン、とささやかに綺麗な音が響く。

「そうだ!ネックレスとして使おう!」

突然ひらめいたようにこう言うと、今ねこがつけているネックレスを外して
元々ついていたハート型のかざりをとった。
そしてそのハート型のかざりのかわりに、我愛羅から貰った鈴をチェーンに
すっと通す。

「よーし。これでいいかな。」
そしてまた首にネックレスをつけ直した。

「...ふふ。なんか本物のねこみたい!」
ねこはそう静かに呟いて、笑った。






7月1日

事件は、ねこが食堂でお昼ごはんを食べているときに起こった。

よくねこがお手伝いした時にアメをくれる食堂のおばさんの一人が
ねこのもとにやってきて言った。

「ねこちゃん。実は折り入ってお願いがあるんだけど....。」

ねこは親子丼を食べていた手をとめてポカン、とおばさんを見上げた。
「はい...どうかしたんですか?」

「実はね...今木の葉で中忍試験やっているでしょう?それでその試験を
 受ける受験者や観光客が宿泊する施設があるのよ。」

「はい。」
ねこは相槌をうつ。

「でね、その施設..客がいっぱいで、今人手不足で困ってるんですって。
 一応ここからも何人か手伝いに行ったんだけど、まだ足りないらしいのよ。」

「そうなんですか...!」

「そうなのよ...あたし達もできることなら行きたいけど...食堂の仕事放り出す訳にも
 いかないしねえ。それで本当に申し訳ないんだけど、ねこちゃん木の葉の里に
 お手伝いに行ってきてくれないかしら...?中忍試験の間だけでいいんだけど..」
おばさんが申し訳なさそうにねこに言う。

「ええ、私でよければ是非お手伝いさせて下さい。」
ねこはそんな頼みに快く返事した。

「ほんと?ありがとうね、ねこちゃん!!」
おばさんはねこの手を取って、心から嬉しそうに笑った。

木の葉の里ってどんなところなんだろう。うわー楽しみ!
我愛羅たちにも会えるかなぁ。お手伝いってどんなことするのかな..?
ねこはそんなことをぐるぐると考えていた。






木の葉の里へは、早速明日から急いで向かうことに決定した。
あまりに急な予定で、ねこはその日ずっとドタバタしていた。
どうやら普通の人の足だと、木の葉まで一週間近くかかってしまうらしい。

唯一気がかりだった受付のお仕事も、キクノさんがこころよく
行っておいで、と言ってくれたので安心して行くことができて良かった。

それにしても...こんなことになるだなんて、びっくりだよね。
我愛羅たちにも、突然きてビックリさせちゃうだろうなあ...。

でもねこは、それ以上に初めての他国にワクワクしていた。
ねこは必要最低限の荷物を準備すると、明日に備えて早く寝ることにした。

そして..すぐに夢の世界に引き込まれていく。




糸は、複雑に絡み合って、やがて