5秒前




もうとっびっきりの美人になりたいだの、セクシーなスタイルだの、
皆に愛される性格だの、おこがましい感情は二度と持たないと
約束するから、どうか平和な日常に戻して欲しい。

木の葉の里では、今まで戦争とか木の葉崩しだとか危機迫ることは何回もあったが、
この状況の方が私にとってはずっと危険だと思った。

飛段と名乗る男に命を握られているこの状況。

今まで忍という忍を避け、一切関わる事なく生きてきたのに。
人生ってほんとうに何が起こるかわからないんだな、と悟った。

「...、といったか?」
突然名前を呼ばれ、ビクッとする。

「あ、はい。」

「少し待ってろよ、」

「は、はぁ...」

飛段という男はさっきいた円の中に戻り、またさっきのように刃物を刺して
じっとしている。

何をやってるんだろうか、この男は。不死身なんてありえないと思っていたけど、
こんな光景を見ていると、否定しようにもできない。
私は大人しく近くの木の根に座ってじっとその光景を見つめる。
痛くないのか...という以前にこの男は疑問点が多すぎる気がする。

どれくらいそうしていただろうか。
飛段はむっくりと起き上がり、片手でズブッと刃物を抜く。血がしたたる。
思わず顔をしかめてしまう。こんな生々しい血を近くで見るのは初めだった。
飛段はまったく気にもせず立ち上がり、パンパンと身に着けていた服を軽く
はらうと、鎖鎌をもって私の方へ向かってきた。

「オイ、。木の葉には詳しいか。」

ケロっと何事も無かったかのように、そう聞いてきた。

「大体は判ると思いますが...。」

飛段は片手を顎にあてて、少し考える素振りをした。

「....一週間。」
そうぼそっと突然呟いた。

「....はい?」
何が言いたいんだろうこの男は、

「だから、オレは今、相棒が一週間不在だから、その間オレは
 木の葉の情報を把握しないといけないワケだ。」

「はい..そうなんですか。」

「で、一週間の間に協力してもらおうというわけだ。良い考えだろ?」
にや、と笑いつつ楽しそうに言い放つ飛段。

なんとなくわかってはいたけど、この飛段とかいう男は最強に自己中心的な男だと
確信した。おまけに気分屋で自信家とみた。

「はい...」

もうどうでもいい。一週間私は奴隷のようにただハイハイと従うしか術がないと
覚悟しなければならないのだから。
いや、それどころか私は犯罪者の片棒を担ぐということにもなり、私も協力者として
晴れて犯罪者の仲間入りじゃないか。ああ、終わった人生が。

「ッハハ..ハハハハ.....」
何かもう笑えてくる。

飛段は一瞬ポカンと呆けて、私を見ていた。

よ、そんなに嬉しいのか?」
そんなことを言ってきた。


プチン

何かが切れた。この男は。この男というやつは。
散々人を巻き込んで、犯罪者にしたて上げようとしてるくせに、何をほざくか。

「..ざ.っ..んな....」

私はぼそっと呟く。
飛段はそんな私を見て「何だ?」とのんきに言っている。

ああ、もう我慢できない。


「ふっざけんじゃねえっって言ったんだよ!!この自己中男がっ!!!!
 何の罪もない一般人を巻き込んでおいて、その上勝手なコトぬかして..!少しは
 こんな災難な目に合う人の気持ちも考えろってんだバーカっ!!!
 大体、あたしは忍なんて大大大大大大っ嫌いなんですーっっ!!!
 せっかく関わらないようにって心に誓ってたのに!そんでこれからも忍と
 接することなくたおやかに平和に暮らしていくつもりだったのに!
 どうしてくれるのよっ!!??あんた責任取れんの?!!あんたにとっちゃ
 あたしみたいな取り柄もクソもない、さえない女なんてどうなろうが良いと
 思ってるだろうけどねっ、あたしは困るの!!!わかる?!!ていうか
 わかれ馬鹿!!!」

ハア、ハアと肩で息をする。何が何だかもうグチャグチャだ。

私はきっと即あの世行きだと覚悟した。でも犯罪者として生きるくらいなら
もういっそ殺せよ、このやろう!ってなかんじだった。
飛段の持っている鎌が私の首を勢いよくハネ飛ばそうと、もういい!

飛段は硬直している、開いた口が塞がっていない様子だ。
凶悪犯罪者には見えない表情だ。

私は一杯一杯ながらも、キッっと飛段をにらみ付けている。

すると、何を思ったかこの男は突然上を向いて大声で笑い出した。

私は思わずビクッとして後ずさりしてしまった。
気が狂った?というか怒りで我を忘れてるとか?
もしかして私なぶり殺しとか....それは勘弁してほしい。

「ゲハハハハハッッ!!!!ハハハアッッ!!!」

飛段は笑い続けている。正直ここまで笑い続けられると不気味だ。

「ゲハア....ハァ....」

ようやく笑い終えて、こっちを真っ直ぐに見た。

私も負けじとにらみ返す。強がっているものの、足は小刻みに震える。
飛段はそんなを見てニヤリともう一度笑い、こう言った。

「オレは気に入ったぜ、

「................は?」

何を言ってるんだ。この男は。

続けて飛段はこう言い放った。


「オレの女になれ。」




(あんなに憧れたドラマみたいな台詞なのに、その台詞は私を地獄に突き落とした!)